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【降っても晴れても すきっぷびより】<123>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑮
2024年04月26日
この子と、24時間一緒にいたい。
息子が582グラムで生まれて1年2カ月、毎日、毎日願ってきたことが、ようやく叶う日が来ました。
NICUから、小児病棟に移ることになったのです。
息子のベッドサイドに寝泊まりしながら、24時間付き添う生活。それは、また違う苦難の始まりでもありました。
入ったのは、4人部屋。付き添いの親の簡易ベッドを借りる手続きから始まります。
「平均身長の女性」が付き添うことが想定されているのか、170センチのわたしが横になると、足首から先は飛び出す小ささ。寝返りをうてるほどの幅もなく、少し重心を移そうものならギシ!ギシ!とすさまじい音。その音で自分や子が起きてしまうこともたびたびでした。
夜間も2~3時間おきに、授乳と薬の投与、カテーテルを使ったお腹のガス抜きを親がせねばなりません。ようやくウトウトしかけたと思ったら、見回りの看護師さんにカーテンをシャッと開けられ、懐中電灯で顔を照らされ。大部屋なので、ほかの子の泣き声や物音も絶え間なく、初日はほぼ一睡もできませんでした。
「眠い…」と思っても日中、簡易ベッドは畳まねばならず、ベッドサイドの小さな丸椅子だけがわたしの居場所。
病院食は、付き添いの家族には出ないため、食事は3食コンビニで。病室での食事は不可で、猛ダッシュでコンビニに買いに行き、病棟近くのデイルームで、大慌てでかきこみます。息子がぐずりがちでそばを離れられず、食事をとれない日や、食べている途中に病室から大泣きする声が聞こえ、半分ほどであきらめる日もありました。
病院内にあった大手コンビニチェーンには、小児病棟にいた2カ月間、大変お世話になったものの、その後一年ほどは、看板を見かけるだけでこの過酷な生活が思い出され、寒気がして店に入ることができませんでした・・・
病棟のシャワーも家族は使えず、夫と付き添いを交替した際、大急ぎで自宅に帰り、入浴。5歳の娘を寝かせるのが遅くなってしまうため、髪を乾かすのもそこそこに病院に戻りました。夫が仕事などで来られない日は、必然的にお風呂には入れません。
目の下にはクマ、不規則な生活でお肌ボロボロ。「あぁ、わたしはいまズタボロだ…」と自分で分かりつつ、極度の寝不足と疲労で化粧はおろか、顔を洗ったり髪をとかしたりする時間も気力もありません。すっぴんボサボサ頭で病棟内をフラフラ歩いていると、時折、NICUから顔なじみの看護師さんがやってきては、「え…しんちゃん(息子)ママ!?だれかと思った!!」と、おばけに遭遇したレベルで驚かれるのでした…
体力だけは自信がある!!
と思っていたものの、さすがにこの生活で2度体調を崩し、発熱。
後から知ったことですが、小児科も付き添い不要な「完全看護」が基本。ですが、多くの病院では看護体制の問題もあり、親が付き添っています。「退院後の家庭生活の練習」という意味もあったせいか、当時は24時間の付き添い以外に選択肢があるとは知りませんでした。
あまりのしんどさに、退院時のアンケートで「付き添いの親たちは『健康で文化的な最低限度の生活』とはかけ離れた日々を送っています。憲法違反ではないでしょうか」と書いたぐらいです。
病気の子と家族を支援する「キープ・ママ・スマイリング」というNPO法人が一昨年、付き添い入院などを経験した保護者らにとったアンケートによると、71%が「希望の有無を問わず、付き添いが必須だった」と回答。「コンビニ弁当が続いた」「睡眠がとれなかった」という声も多く、半数以上が付き添い中に体調を崩したそう。
「分かる…!本当につらいよね…!」と、当時のことがまざまざとよみがえり、涙が出そうになりました。
ただでさえ病気でしんどい子どもたちが、ひとりで過ごすのはつらいもの。保護者の付き添いは必要だとは思うものの、親たちにも休息やケア、食事やお風呂などの環境整備も必要だと感じます。上記のNPOのことは数年前に知り、クラウドファンディングなどでささやかながら活動を応援しています。
付き添いのハードさに打ちのめされつつ、NICUの外の世界は刺激と自由にあふれ、感激の連続。
ようやく、「患児」ではなく「ひとりの子ども」になれた。わたしたち家族の日々が、劇的に変わって行きました。
※写真①は、小児病棟に移る少し前から始めた離乳食の様子。
写真②は本人不在で開いた1歳の誕生日会です。
(⑯につづく)
過去のブログについては、下記をご参照ください。
<122>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑭
<120>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑬
<119>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑫
<118>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑪
<117>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑩
<116>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑨
<115>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑧
<114>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑦
<113>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑥
<112>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑤
<111>「手のひらサイズ」で生まれたきみと④
<110>「手のひらサイズ」で生まれたきみと③
<108>「手のひらサイズ」で生まれたきみと②
<107>「手のひらサイズ」で生まれたきみと①
▽萩原 真(はぎわら まこと)
【降っても晴れても すきっぷびより】は、すきっぷスタッフで元記者の萩原が、3人育児のドタバタや障害のある息子との生活で感じたこと、うれしいことから尽きない悩みまで本音満載でお届けします。
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