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【降っても晴れても すきっぷびより】<117>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑩
2023年10月25日
長男が予定日より3カ月早く、582グラムで産まれた2011年。わが家に手伝いに来てくれていた母が仙台の実家に戻った翌日、東日本大震災が起きました。
妹や父、友人たちとようやく連絡が取れたのは、発生から1週間近くあと。家の中はめちゃくちゃ、ライフラインは完全に途絶え、近くの小学校に行ってみたものの超満員で入ることすらできず、マンションの住民で炊き出しを始めたと聞きました。
のちに「全壊」と判定された築20年以上のマンションで「避難生活」なんて、大丈夫だろうか…。非常に心配だったものの、NICUに入院する息子の容態は一進一退で、こちらも身動きが取れず、「なんでこんなときに」と、ただただ、もどかしい思いでした。
突然の早産、長期入院で、4歳の娘との時間も大切にできなくなり、息子の命の火はいつ消えてしまうかわからない。報道も注目もされなくても、こうして生活すらままならない中で「命」の危機と必死で戦う人が数多くいるんだろうな…。思い知りました。
はじめは口から気管に挿管されていた呼吸器は、生まれて約2週間後に外れ、鼻に着けるタイプに。3月14日にはさらに、その呼吸器を時折外す練習がスタート。
保育器内に酸素を流しながらのチャレンジで、うれしさ半分、心配半分。「保育器に手を入れて触ってあげても大丈夫ですよ」と看護師さんに言われたものの、手を差し込む窓を開けると器内の酸素濃度も下がり、気が気ではなく、すぐに閉めました。
小さく生まれた子たちは週1回、眼科健診があります。目を器具で大きく開かれるのが痛いのか、怖いのか、どの赤ちゃんも絶叫、号泣。親にとってもつらい時間でした。
ある日、眼科の医師から呼ばれ、「未熟児網膜症」の説明を受けました。
当時のデータですが、1000グラム未満で生まれた子の85%が発症し、レーザー治療が必要になる子が40%、そのかいなく視力がほとんどなくなる子が5%、とのこと。レーザー治療には副作用もあり、9割の確率で近視になり1歳ごろからメガネが必要になるほか、視野が狭くなったり斜視になったりも…。
体重が軽いほど、出生週数が早いほどリスクが高く、未熟児網膜症の心配がほぼなくなるのは45~50週ほどに成長してから。状態が悪くなっていると分かれば、翌日には全身麻酔で5時間ほどの手術(レーザー治療)を受けねばならない、と言います。
まだ600グラムほどの子が、全身麻酔で手術?
視野が狭くなったら将来、スポーツや運転はできるの?
もし、目が見えなくなったら…?
病気にも、手術にも、手術の副作用にも、不安と恐怖でいっぱいになりました。わたし自身、裸眼で2.0近くあるほど目が良く、「わたしの目をあげられたらいいのに」と、何度思ったかわかりません。
その2日後、今度は、まったく逆の驚きがありました。なんと、初めて抱っこさせてもらえると言うのです。生まれてから1カ月と2週間。念願がかなった喜びと、「保育器の外に出て、しんどくなったらどうしよう」という心配とで、ハラハラドキドキの初抱っこでした。バスタオルをぐるぐる巻きにされ、帽子をかぶり、酸素を送る機械を口もとに当てながら腕の中にやってきた息子。600グラムとは思えないほどの重みを感じます。
わたしがママだよ。一日に数時間しか一緒にいられないけど、保育器の外で見ていることしかできないけど、ママのにおいと声、覚えておいてね。
「このまま一緒に連れて帰れたらいいのに…」と思いながら、そう話しかけました。
さらに2日後には、肌と肌を触れ合わせる「カンガルー抱っこ」も、初めて実現。手から、肌から気持ちが伝わるよう、愛情をこめて抱っこさせてもらいました。
わたしの健康、運、目、手足、すべてこの子に差し出しますから、どうかすくすく成長して、幸せに生きてくれますように。
全力で願いながら抱きしめていたことが、当時の日記に書かれています。
約1時間の抱っこ。手はしびれたけれど、幸せな時間でした。
ミルクにオイルを添加するようになったおかげか、体重も順調に増え始め、うれしい成長が続いた矢先、心配していた未熟児網膜症が進行し、手術が決まったのです。
※過去のブログについては、下記をご参照ください。
<107>「手のひらサイズ」で生まれたきみと①
<108>「手のひらサイズ」で生まれたきみと②
<110>「手のひらサイズ」で生まれたきみと③
<111>「手のひらサイズ」で生まれたきみと④
<112>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑤
<113>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑥
<114>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑦
<115>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑧
<116>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑨
▽萩原 真(はぎわら まこと)
【降っても晴れても すきっぷびより】は、すきっぷスタッフで元記者の萩原が、3人育児のドタバタや障害のある息子との生活で感じたこと、うれしいことから尽きない悩みまで本音満載でお届けします。
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