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• 子育てブログ

第2子の息子を予定日より3カ月早く、582グラムで出産。
約1カ月、手伝いに来てくれていた母が、3日ほど仙台の実家に帰ることになりました。
東北地方では数週間前から大きな地震が相次いでおり、「地震には気をつけて」と見送りました。

今から12年前の2011年3月10日、息子が生後1カ月を迎えた日のことでした。

翌日も、息子に会うため昼からNICUへ。
夫とふたりで保育器の前に座っていると、かすかな揺れが。どんどん強くなり、酔いそうなほど長時間の横揺れが続きました。
必死で保育器をおさえながら、「どこか遠くで、もっと大きな地震が起きているのでは」と直感し、夫に携帯で地震情報を見てきてほしいと頼みました。

すると、まさかの「宮城県で震度7」との情報。
慌ててNICUを出て、携帯のワンセグでニュースを見ると、津波が車や家を襲う映像がライブで流れています。
実家は内陸部ですが、両親と妹は仕事や市民活動で各地を飛び回る生活。「無事だけど、家の中はめちゃくちゃ」「マンションの至るところにヒビが入って、傾いているかも」。母、父、妹、数人の友人からそれぞれメールが一度届いたきり、だれとも連絡がとれなくなりました。

のちに「東日本大震災」と呼ばれる大地震でした。

その3日前、息子の主治医から「呼吸がしんどそうなので、母乳をやめたい」と、話がありました。
早く体重が増えるようカロリーを添加した母乳を注入していましたが、うまく消化できず、お腹にガスがたまりがちで呼吸にも影響が出ていました。このままでは腸管破裂の恐れもあるそうで、消化のいい「エレンタール」という成分栄養剤に替えるとのこと。

わたしの母乳で、息子が大きくなる。唯一母親としてできることだと、心の支えのように思っていたのでショックでしたが、息子にとって最善の方法ならぜひ、とお願いしました。
それでも、いつ再開してもいいように、いつか直接おっぱいを飲ませられるように、それからも毎日、数時間おきに搾乳しては捨てる…という生活を、1年以上続けました。

突然の早産、家族がバラバラの入院生活。ただでさえ心も、体も、生活もボロボロになっているところに襲った、ふるさとの大災害。
息子も命が危うい状態で、仙台に駆けつけることもできない。起きたことを受け止めきれず、心が麻痺したような状態で、呆然とテレビを見つめていました。

「1000年に一度の揺れ」とも言われた、東日本大震災。こんな災害が起きることがあるのだ、そして、いつ起こってもおかしくないのだと痛感して、たちまち怖くなりました。

保育器や呼吸器、モニター、点滴…多くの医療機器に守られている息子。不安になって看護師さんに聞くと、停電した場合は自家発電に切り替わるけれど、それもダメになれば、一人ずつ手動で酸素吸入するしかないそう。阪神・淡路大震災のときは完全に停電し、保育器代わりにバスタオルを巻いて保温したとか。そのときの教訓から、保育器のキャスターにストッパーがかかっていると倒れてむしろ危ないため、常に外した状態にして、揺れに合わせてNICUを移動するようにしている、と。

巨大地震の揺れに翻弄されながら部屋中を移動し、ぶつかり合う大量の保育器を想像すると、とてもじゃないけど安心はできません。

ようやく600グラムを超えた、小さな小さな命。
命綱である医療機器に欠かせない電気や水も、いつ途絶えるか分からない。わたしが常に一緒にいて、守ってやることもできない。薄い氷の上に立っているような感覚をおぼえました。

家族、友人、仙台、東北の人たち、そしてわが子が、どうか無事でありますように。
「大丈夫、大丈夫」と言い聞かせながら、とにかく今できることをしていくしかないと、自分を奮い立たせるのでした。

過去のブログについては、下記をご参照ください。
＜107＞「手のひらサイズ」で生まれたきみと①
＜108＞「手のひらサイズ」で生まれたきみと②
＜110＞「手のひらサイズ」で生まれたきみと③
＜111＞「手のひらサイズ」で生まれたきみと④
＜112＞「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑤
＜113＞「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑥
＜114＞「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑦
＜115＞「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑧

▽萩原　真（はぎわら　まこと）
【降っても晴れても すきっぷびより】は、すきっぷスタッフで元記者の萩原が、3人育児のドタバタや障害のある息子との生活で感じたこと、うれしいことから尽きない悩みまで本音満載でお届けします。