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【降っても晴れても すきっぷびより】<113>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑥

2023年06月22日

  • 繝輔ぉ繧、繧ケ繝悶ャ繧ッ

朝から晩まで、泣いても泣いても、1ミリも癒されない悲しみもある。
息子を582グラムで産んでしまった12年前の2月、
そんなことを感じながら、ただ、泣き続けていました。

27週2日での出産。
まだ自分で呼吸ができず、気管挿管されNICUに入院した息子は、
暴れると危ないからと、保育器の中、薬で眠らされていました。
「お名前、考えてるからね」。
話しかけるとまぶたがピクピクッと動き、「あぁ、生きてる」と、うれしさと切なさでいっぱいになりました。

乱高下していた血糖値が少し落ち着き、生まれて4日後、ようやく母乳がスタート。
まずは1日1回、0.5cc。管からゆっくり注入します。
「うまく消化できるか、これからは腸の戦い」と主治医に言われていたので心配しましたが、
初回は問題なく、一安心。

おしっこが出た。今日は初めて、うんちが出た。消化する。呼吸をする。
当たり前に思っていた“生理現象”の一つひとつが大きな山で、「生きる」って当たり前ではないんだと、思い知りました。

同時に知ったのは、
現代の医療を結集させても、「お母さんのお腹のなか」にはまったくかなわないこと。
なぜ、そこで育ててあげられなかったんだろう。わたしの何が悪かったんだろう。
申し訳なさと心配で、また涙があふれました。

あのころ、看護師さんや周りの人にいちばん言われたのは、
「お母さんがそんなに泣いていたら、赤ちゃんも悲しむよ!」「お母さんがしっかりしないと」
という言葉。
元気を出さなきゃ、わたしが頑張らなきゃ。そう思っても、混乱と絶望と不安だけで頭と体がいっぱいになります。
「わたしは、息子をお腹のなかで育てられなかったうえに、悲しませてしまうダメな母親だ…」ますます自分が“母親失格”に思えて、つらくなるのでした。

そんな日々を重ねて、自分でも少しずつ分かっていったのは、
「お母さん」だから涙が出る。お母さんだから、心配、だということ。

愛情があるから、その子が世界一大切だから、悩むし、不安になるし、失敗もすれば右往左往もする。

その後、1年以上のNICU生活で、「自分がしっかりしなきゃいけないのに…」と苦しむ多くのママたちと出会い、「頑張って元気になろうとしなくていいと思うよ」と、何度も話しました。

泣くことや悩むことを無理に止めようとするのではなく、
ひとりで泣いたり悩んだりしなくていいように、ママたちが自然と笑顔になっていけるように、
家族丸ごとのサポートが必要。
いま、「どんな子も暮らしやすい西宮を考える会」という小さな市民団体を運営するのも、そのときの気持ちがベースになっています。

当時、心を温かくほぐしてくれたのは、
「大丈夫大丈夫!」「お母さんも、頑張りすぎないで」という、看護師長さんが肩を抱きながらかけてくれた言葉。
「『大丈夫』だなんて、無責任な」…とは、まったく思いませんでした。

大丈夫、きっとこの子は大丈夫。自分を信じて、強く明るく生きてほしい。わたしたち親も、この子を信じて強く明るく生きていこう。
生後6日、そんな思いをこめた名前をつけました。
手をそっと触るとピクッと動き、小さいけれど懸命に燃える命の炎を感じて、また胸がいっぱいになるのでした。

※過去のブログについては、下記をご参照ください。
<107>「手のひらサイズ」で生まれたきみと①
<108>「手のひらサイズ」で生まれたきみと②
<110>「手のひらサイズ」で生まれたきみと③
<111>「手のひらサイズ」で生まれたきみと④
<112>「手のひらサイズ」で生まれたきみと⑤

▽萩原 真(はぎわら まこと)
【降っても晴れても すきっぷびより】は、すきっぷスタッフで元記者の萩原が、3人育児のドタバタや障害のある息子との生活で感じたこと、うれしいことから尽きない悩みまで本音満載でお届けします。

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