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【降っても晴れても すきっぷびより】<108>「手のひらサイズ」で生まれたきみと②

2023年02月14日

  • 繝輔ぉ繧、繧ケ繝悶ャ繧ッ

582グラムで生まれた息子、12歳になりました。
誕生日の夜にこの原稿を書いています。

体重は32.6キロと、56倍に。3000グラムで生まれた赤ちゃんなら、小6で168キロになっている計算です。
本当に、がんばって大きくなってくれました。

彼の妊娠10週だった2010年10月、会社で突然、大量の出血。
かかりつけ医から「この時期の流産は防げないので、受診不要」と言われたものの、やはり心配で、県立病院の夜間外来で診てもらいました。

覚悟しつつ見たエコーで、なんと、赤ちゃんは元気。「こんな目にあっても生きていてくれた」と安堵する一方、出血はまったくおさまらず、これからどうなるのだろうと不安が膨らみました。

後日あらためて受診すると、子宮のなかに大きな血のかたまりがあり、再度流れ出したら赤ちゃんも危ない―とのこと。
「食事とトイレ以外はリビングに敷いた布団で寝たきり」という生活が始まりました。

まず困ったのは、4歳だった娘の保育所の送迎やお世話。
実家(宮城県仙台市)は遠く、朝から晩まで仕事ばかりしていたので、近所に友人もほぼいない。母が来てくれることもありましたが、基本的には夫が仕事をしながらすべての家事育児を担いました。

そんなときに使える公的サービスも相談先も、何も知らなかったのです。

そしてやはり、仕事のこと。
すべての約束をキャンセルし、担当コーナーをだれかに振ってもらい…。娘のときも切迫早産で「ある日突然、職場から消える」事態となったのに、なぜ、「今回は大丈夫」などと過信していたのか。

児童相談所に夜間、密着する取材を予定し、職員さんと何度も話し合いを重ねていました。児童虐待は、入社前から取り組みたかったテーマ。さまざまな部署をへてようやく手にした希望の担当で、「絶対にいい記事にしよう」と意気込んでいました。

お腹の赤ちゃんの命はもちろん、何より大切。
仕事はまた、いつでもできる。

それはそう、そうなのですが、
何とか実現した企画や懸命に働いた末に任された仕事を、「またいつでもできる」とは思えないものです。妊娠・出産の適齢期と仕事が軌道に乗り始める時期が同じ、という厳しさを思い知りました。

片方の性からしか生まれない仕組みはある意味、効率的。ですが、「子どもが3人ほしい」と思ったとき、仕事をセーブし、お酒を我慢し、つわり・頻尿・腰痛等の不調を引き受け、めっちゃくちゃ痛い思いをするのは3回とも女性。

おまけに、出産でボロボロなほう(女性)からおっぱいが出るという、妊娠・出産界での男女の圧倒的不均衡。頭ではわかっていたことながら、自分が当事者になり、「なんて雑なシステムだ…」と痛感します。

「妊娠や授乳ができる」のは幸せでもあり、夫と交替で妊娠できたらベストですが、今回の人生では叶えられそうにないので、せめて「産まないほう(男性)」も当事者としてともに考え、分かち合える社会に…と、より強く思うようになりました。

「赤ちゃんも、仕事も守れなかった…」
情けなくて悲しくて、テレビに「元気な妊婦さん」が出てくるとそっとチャンネルを替え、カーテンを閉め切った部屋でただ時間が過ぎるのを待つように暮らした、あのころ。

その後、4歳の末っ子の妊娠でも切迫早産=「食事とトイレ以外は寝たきり」生活になったものの、息子の子育てや市民活動で出会った友人たちがおかずを届けてくれたり、市のヘルパー派遣事業を利用して料理や掃除をしてもらったり。
家族だけで必死に乗り切っていた12年前とは、まったく違う風景がありました

「あの経験があってよかった」とは軽々しく言えないけれど、
仕事しかなかったわたしの人生に、たくさんの気づきと、温かい人たちとの出会いをくれた息子。

あらためて、ありがとう。
そして12歳の誕生日、おめでとう。

(毎年恒例、わが家の節分話~2023編~を挟んで、③につづきます…)

▽萩原 真(はぎわら まこと)
【降っても晴れても すきっぷびより】は、すきっぷスタッフで元記者の萩原が、3人育児のドタバタや障害のある息子との生活で感じたこと、うれしいことから尽きない悩みまで本音満載でお届けします。

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