- 前のページに戻る
子育てブログ
まぁるく子育て ブログ
(111)中須賀巧准教授 子どもの「自律」 夢中になれる仕掛け 工夫して
2022年12月11日
勉学、運動、仕事、さまざまな活動の始発点(始めるとき)には、「自律」か、「強制」かの二項対立の教育観が存在すると言われています。
「自律」とは自身の行動を自分で決定している感覚のことです。これは活動開始を本人に任せるため、活動が始まるまでに時間を費やすが、いったん活動が始まると夢中になり、活動の再現性や継続性が期待できます。
一方で「強制」とは、誰かに「〇○しなさい」「△△をやりなさい」と言われて仕方なく行動することを意味します。本人のペースに依存せず、活動は即時開始されますが、渋々活動したり、指示待ち傾向が強まったりして、自律を阻害します。また活動の再現性や継続性も期待できません。
自律と強制どちらを推奨するかは、学校や企業など(もちろんご家庭も含み)、人を育てる際の教育・育成方針の観点として議論が進められています。理想は自ら考え、挑戦し、行動してほしい、そういった自律を育むことではないかと思います。
ここでは、特に子どもの「自律」に着目し、3歳を迎えた三女の「自律」の芽生えに直面したときの私のエピソードを紹介します。
お絵描きや文字書きが大好きな3歳になる娘ですが、最初からそうだったわけではなく、ある日、自分から興味を持って、進んで絵を描いたり、文字みたいなものを書いたりし始めたのです。
そのような活動を表出させた背景には、至ってシンプルですが、家の中にある仕掛けを施していたのです。具体的には、筆記具にクレヨン、ペン、色鉛筆、筆など、また材質やサイズの異なる紙に画用紙、コピー用紙、色紙や段ボールなど、それらを娘の目線の高さに合わせて配置し、後はただ見守るだけです。
すぐに効果は出ませんが、数日後、突然、本人が筆記具を選びだし、好きな紙に思いのままにグルグルしていました。床に散らばったいろいろな筆記具でグルグルと描かれた紙の量、まさしく娘の壮絶な試行錯誤の痕跡でした。そして彩られた娘の手のひらや指先、そして満面の笑みで握りしめられたペンは相棒になりました。
ポイントは、子どもの目線に合わせて道具を配置し、それを大人が何度もどうなるかシミュレーションすることです。
子どもの自律を育むために私たちにできることは、何かを強制させることではなく、子どもたち自らが夢中になれる遊び場や学び場を工夫し、活動をそっと見守ることではないかと感じました。
× ×
子育てをテーマに、兵庫教育大大学院学校教育研究科の教授らがつづります。
◇原則、第4日曜に掲載します。
▽なかすが・たくみ 1985年、大阪府羽曳野市生まれ、加東市在住。兵庫教育大准教授。専門は体育・スポーツ心理学。体育授業場面やスポーツ活動場面における動機づけ雰囲気の教育的効果を研究。
2022/11/27 神戸新聞
まぁるく子育て ブログ
-
(115)子育てアドバイザー 楠本洋子 別れと出会いの季節 「親育ちの萌芽」に寄り添う
2023年04月04日
-
(114)高野美由紀教授 イライラの正体は 脳が生存の危機と判断?
2023年03月16日
-
(113)門脇早聴子講師 楽器の演奏 デタラメでも楽しければ
2023年02月07日
-
(112)水落洋志講師 無限の可能性 時にはじっと挑戦を見守ろう
2023年01月11日
-
(111)中須賀巧准教授 子どもの「自律」 夢中になれる仕掛け 工夫して
2022年12月11日
-
(110)淺海真弓教授 工作の定番素材、廃材 「魔法の種」を捨てないで!
2022年11月08日
-
(109)藤崎亜由子准教授 生きものたちとの出合い 子どもの心に風を運ぶ
2022年09月27日
-
(108)森田啓之教授 水と関わる 海や川で自然を体感して
2022年09月08日
-
(107)鈴木正敏准教授 共に探す答え 形を変える水のごとく
2022年08月12日
-
(106)飯野祐樹准教授 ランドセルと多様性 本質見抜く力が重要
2022年06月27日
-
(105)高森久仁子 特定教諭 嫌だという気持ち 経験重ね、相手への伝え方学ぶ
2022年05月25日
-
(104)茶谷智之講師 リュックの子 「常識」にとらわれず見守る
2022年04月28日