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専門家に聞く
『産後うつ病』の増加、私たちに出来ること
産後うつ病の増加や危険なポイント、相談窓口などについて、精神科専門医の井窪薫先生に教えていただきました。
2022年11月14日
こんにちは。
今回、初めてQ &Aを書かせていただきます精神科医 井窪 薫です。
現在、5歳・3歳・2歳・0歳の4児の絶賛子育て中です。
今回のお題は、
『産後うつ病』の増加、私たちに出来ること。
COVID-19の出現によって、日常のさまざまな事が変化しました。
出産・育児に関しても、以前とは180度違う世界が広がっていると思います。
私自身もコロナ禍の出産を2度経験しました。
以前の出産に比べて、気を使うことが多く、大変だと感じました。
ただ職業柄、自分の状態を客観的に判断し、弱っている時に頼れる場所を知っていたということはとても助けになりました。しんどい時にいろいろと自分で調べるのは大変なので、今回私なりにまとめてみました。
■「産後うつ病」とは?
「産後うつ病」の罹患率は全体の10%で、気分の落ち込みや楽しみの喪失、自責感や自己評価の低下などの症状が出現し、産後3か月以内に発症することが多いです。
マタニティブルーズが通常1-2週間でおさまるのに対し、「産後うつ病」の症状は2週間以上持続します。マタニティブルーズがあった女性は「産後うつ病」発症のリスクが高まると言われています。
■「産後うつ病」の簡易検査は?
現在、「産後うつ病」の早期発見と支援のため、EPDS(エジンバラ産後うつ病質問票)を用いた簡易検査が開始されており、産後2週間検診や、1ヶ月検診などで導入されています。
質問形式の回答を点数によって判定し、高い点数の場合は注意が必要です。
ただEPDSの結果だけでは確定診断はできないので、「産後うつ病」の診断には精神科医の診察が必要となります。
■「産後うつ病」は増えているの?
コロナ禍で妊産婦を取り巻く環境は大きく変化し、さまざまな制限を余儀なくされています。コロナ禍で出産・育児を経験した産婦の約30%(28.7%)が「産後うつ」状態にあり、それ以前の割合(14.4%)に比べても、非常に高い割合であると報告されています。
原因としては
・妊娠期間中および産後に、出産や育児について友人に相談できなかったこと、
・里帰り出産をあきらめたこと、
・分娩施設の方針で出産や母乳育児が自分の希望通りにできなかったこと、
・離れて暮らす家族から産後のサポートが受けられなかったこと、
・新生児訪問・乳児検診が中止になったこと
などがあげられます。
■「産後うつ病」の危険なポイントは?
「産後うつ病」は母子関係に悪影響を及ぼすだけでなく,母親の自殺、子どもの虐待や発達にも悪い影響を及ぼすことが明らかになっています。
死にたいという気持ちがある時や自分を責める状態が続いている場合、また家事や育児などが行えない時などは精神科医の受診が必要です。治療には、パートナーをはじめとした家族や医療スタッフ、地域の保健師などとの連携が重要となります。
■「うつ病」とはどういう状態?
精神科医は「精神障害の診断と統計マニュアル」DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorderの頭文字を略してDSMと呼びます)の診断基準を用いて診断します。そのまま引用すると医療用語が多く、分かりにくいので私なりに重要な点を書き出したいと思います。興味のある方は、DSM-5で検索してみてください。
診断のポイントは、気分の落ち込みと、以前楽しかったことが楽しく感じられない状態が続いていることです。
また、それに加えて、食欲が落ちて体重が著しく減少した、夜泣き以外の原因で眠れない、気持ちが落ち着かない、自分を過剰に責めてしまう、などの症状が出現することもあります。
それらの症状が2週間以上続いており、それによって日常生活に支障がでている場合は要注意です。
■「うつ状態」の時に医療機関が行う事
精神科・心療内科では、上記の様子を聞きながら、患者さんの日々の生活をイメージし、診断、処方や環境調整を行います。
環境調整は、ご家族の理解や協力に加えて、必要な時には行政サービスの提案も行います。
「うつ病」だと必ず薬を飲まないといけないわけではなく、患者さんが選択することができます。環境調整で改善することも多いですが、状態が重篤な場合は入院・薬物療法が必要になります。可能な限り状態が悪化する前に、受診してもらいたいと思います。
■最後にメッセージ
産後はホルモンバランスが崩れて疲労も重なり、精神バランスが崩れやすい時期です。
「産後うつ病」を予防するにあたっては、この情報を本人だけでなく、周りのパートナーや支援者が知っている必要があると思っています。
体調を崩すのは決して本人のせいではありません。「うつ病」は心の風邪と言われる通り、誰でもかかる可能性があります。大事なのは、その状態に早く気づき、早めに対策を行うこと。
ママの元気が育児には1番大切です。
しんどい時には、周りに頼り、貴重な子育て期間を存分に楽しんでください。
【アドバイスをいただいた専門家】
医学博士 精神科専門医 産業医
専門分野:精神神経
井窪 薫 先生
==参考情報==
【相談窓口】
「電話は苦手・・・」「SNSで相談したい」という方のためのオンラインのチャット機能を使った相談
対象:兵庫県内在住、在勤、在学の女性
毎週火~土曜日 10時~13時 (祝祭日、及び年末年始12/28~1/3を除く)
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子育てについて、気になることを電話かLINEチャットで相談
対象:兵庫県内で在宅育児(就学前まで)を行う保護者
内容により、助産師・看護師・栄養士・歯科衛生士などの専門家による無料のWeb・訪問相談あり
月曜日~金曜日 9時~17時(祝日・年末年始12/29~1/3を除く)
------------------------------------------------
神戸市各区役所の子育て相談。区によって専用電話番号があります
平日の8時45分から17時30分(祝日除く)
------------------------------------------------
電話相談のほか、面接や訪問相談も行っています。
電話相談 078-382-2525
平日8時45分から17時30分
24時間相談もあります。
【利用できるサービス】
兵庫県下の市町が設立・運営し、子どもの預かり等の“援助を受けたい人”と“援助を行いたい人”が会員となって、子育てに関する地域相互援助活動を支える制度です。
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体調不良などで家事や育児が困難なご家庭に、神戸市と契約した事業所からヘルパーを派遣し、昼間日常的に妊婦や養育者がされる家事や育児をお手伝いします。
月曜日~土曜日の9時から18時まで(祝日と年末年始12/29~1/3除く)
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病気や出産、事故などで保育が困難になる場合や、リフレッシュしたい時などにお近くの児童養護施設、乳児院、母子生活支援施設でお子さんをお預かりしています。
ショートステイとデイサービスがあります。
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