「産院を選んだポイント」について…上…

「聞いて&教えて」で投稿のあった「産院を選んだポイント」について、パルモア病院院長の山崎先生にアドバイスをいただきました!8月7日にオンエアされたラジオ関西子育て応援プログラム「にょっきにょきラジオ」でもお話いただいています。

2016年08月09日

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◆「周産期」とはどのような意味ですか?

 周産期とは、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる間から生まれてからしばらくの時期まで、具体的には妊娠22週から生後1か月の期間をいいます。健康な赤ちゃんにとっても、生まれつきの病気を持っていたり、または生まれるときに異常が起こった赤ちゃんにとっても、生まれた直後からの十分に観察と、必要があれば素早くかつ適切な処置を行うことがとても大切です。「こどもたちの健やかな成長」を願い、生まれる前からお母さんを通じて赤ちゃんを見守り、お産と育児をサポートしながら必要な医療を提供する、というのが周産期医療のコンセプトです。

◆「カンガルーケア」って何ですか?

 20年以上前、南米のコロンビアで低体重や早産の赤ちゃんが生まれたときに、保育器が十分になかったためにお母さんに赤ちゃんをずっと胸の上に抱っこしてもらったところ、予想以上に赤ちゃんの全身状態が安定し、死亡率が低下したというのがもともとの始まりでした。カンガルーが赤ちゃんをお母さんのお腹の袋で育てることに似ていることからこの名前がありますが、今では多くの病院で、「早期母児接触」という言葉を正式名称として使っています。

 これは、単にスキンシップを保つだけではありません。母乳育児を成功させるためにも大変重要です。早期母児接触の目的の一つは、出生後30分以内に赤ちゃんに授乳させることです。赤ちゃんは本能的にお母さんの胸のうえでおっぱいを探し、吸い始めます。出産後できるだけ早い時期のこの刺激が、お母さんにとって乳汁分泌を促す大事なシグナルになります。

 また、赤ちゃんが飲む乳汁の量ははじめはごくわずかであっても、お母さんのもつ正常な細菌も一緒にとりいれることができ、これによって腸内細菌叢が正常に形作られることにつながります。そして、早期母児接触中の赤ちゃんは呼吸、血圧、血糖が安定しますので、ストレスやエネルギー消費を減らすことができます。なによりも、身体的な面とともにお母さんと赤ちゃんの精神的な絆がそのような接触を通じてより太く、強くなることが期待できます。

◆出産直後のお母さんは疲れているので、「カンガルーケア」はしんどくないで

すか?

 もちろん、出産はお母さんにとって、大変な重労働であることは確かです。しかし、赤ちゃんの産声を聞いて「ああ、よかった。早く見せて!」と思うことができたお母さんであれば、ほとんど全ての場合早期母児接触を楽しんでいただけるだけの体力は十分にあるはずです。

 お母さんには生まれたての赤ちゃんと一緒にいることで心も体も安定するような仕組みが予め備わっています。どんなに長くて辛いお産であってもそれを乗り越え、早期母児接触中の赤ちゃんを見守るお母さんは例外なく美しい笑顔でいらっしゃいますし、お母さんと赤ちゃんを見守るお父さんやご家族のご様子ほど、幸せな情景はないと思います。

 もちろん、赤ちゃんの調子が悪い場合のほか、お母さんに産後出血量がとても多いとか、医師や助産師・看護師の呼びかけに十分な応答ができない等の異常がある場合は、それぞれの治療が優先されるので、早期母児接触は中止したり初めから実施できません。

 しかしそうでなければ、カンガルーケアを経験していただくことがその後の長い子育てをスムーズにスタートできるという意味で、お母さんの多少の「しんどさ」をはるかに上回るメリットがあるとかんがえられています。

◆カンガルーケアには危険性もあると聞いていますが、どのようなものですか?

 まず気を付けなければならないことは、生まれたての赤ちゃんはちょっとしたことですぐに息がとまったり、十分に呼吸ができなくなってしまうことです。たとえば、姿勢が悪くなって鼻が押さえられてしまったり、分泌物が増えて気道が詰まったりする場合です。また、知らず知らずのうちに赤ちゃんの位置がずれてお母さんの胸の上から転落してしまうことも注意しなければいけません。

 したがって、早期母児接触中は赤ちゃんの呼吸状態を目視か、酸素分圧モニターで始終観察する必要があります。

 また、お母さんと赤ちゃんだけを部屋に残すことなく、頻繁に二人の状態を観察し、声掛けを行って不都合の無いように気を付ける必要があります。

 したがって、早期母子接触は単なるファッションで行うものではなく、母児のために人手と手間暇をかけて行う医療の延長線上にあるものです。

~「産院を選んだポイント」について…下…に続きます~

【アドバイスをいただいた専門家】

医療法人社団純心会パルモア病院院長

産科・婦人科医師

山崎峰夫先生

聞いて&教えて【産院を選んだポイント】

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